30秒でわかるまとめ
- 習慣は意志や目標よりも、場所や時間などの「いつものきっかけ」によって自動的に動き出します(Wood & Neal, Duke University, 2007)。
- 英国バース大学の野外実験では、最近引っ越した人ほど、生活習慣を見直す働きかけに反応しやすいことがわかりました(Verplanken & Roy, 2016)。
- 生活の大きな変化は古いきっかけを消し、新しい習慣を入れるすき間を作ります。研究者はこれを「習慣の不連続性」と呼んでいます(Verplanken & Roy, 2016)。
- チャンスは長くは続きません。新しい生活パターンが固まる前に、行動を決めておくことがポイントです。
4月に転勤で大阪から東京へ。ワンルームの新居、初めて乗る路線、知らないコンビニ。慌ただしい毎日ですが、実はこの時期こそ、習慣を変える絶好のタイミングかもしれません。
なぜ習慣は「意志」だけでは変わらないのか?
デューク大学のウェンディ・ウッドらは、習慣が目標や意図ではなく、環境のきっかけによって引き起こされることを論文で整理しました。帰宅して玄関を開けるとテレビをつける、駅の改札を出るとコンビニに寄る。こうした行動は「やろう」と決める前に始まっています。
つまり、強い決意をしても、きっかけが同じままなら体は同じ行動を選びがちです。ダイエット中なのに帰り道のコンビニでつい甘いものを買ってしまうのは、意志が弱いからではなく、毎日同じ道を同じ時間に通っているからです。どの習慣から手をつけるか迷ったら、まず記録を始めるのが近道です。どんなツールが合うかは習慣トラッカーアプリの比較が参考になります。
このしくみについては習慣がなかなかやめられない理由でも詳しく解説しています。
生活が変わると、なぜ習慣を変えやすくなるのか?
バース大学のバス・フェルプランケンとデボラ・ロイは、英国の住民を対象に、環境にやさしい生活習慣(省エネ、移動手段など)をすすめる働きかけを行いました。その結果、最近引っ越してきた人のほうが、長く住んでいる人よりも働きかけに反応して行動を変えやすいことがわかりました。
理由はシンプルです。引っ越すと、通勤ルート、買い物をする店、朝の動線など、古い習慣を動かしていたきっかけがまとめてリセットされます。行動を自動で選べなくなるため、人は一時的に「どうしようか」と考えるようになります。その考える瞬間に新しい選択肢を差し込めば、それがそのまま次の習慣になりやすいのです。
研究者はこれを「習慣の不連続性仮説」と呼び、生活の変化が習慣を変える「窓」になると考えています。
どんな変化が「習慣を変えるチャンス」になるのか?
引っ越し以外にも、日本の生活でよくある変化はたくさんあります。
- 転職・異動・転勤: 通勤時間、昼休みの過ごし方、退勤後の流れが一気に変わります。
- 就職・進学で一人暮らしを始めた時: 食事、睡眠、家事の習慣をゼロから作ることになります。
- 出産・育休からの復帰: 一日のリズムが大きく変わるので、続けたい習慣を絞り直すよい機会です。
- 定年退職: 会社に行くという最大のきっかけがなくなるため、新しい一日の柱が必要になります。
逆に、生活の変化はよい習慣を壊すこともあります。前の職場ではジムに寄るのが当たり前だったのに、異動して帰り道が変わったら行かなくなった、という例はよくあります。変化の時期は「新しく作る」と同時に「守りたいものを守る」時期でもあります。
生活が変わった時に習慣を変える方法
変化の直後は疲れていて、つい流されがちです。次の手順で、先に行動を決めておきましょう。
- 続けたい習慣と、やめたい習慣を一つずつ書き出す。 欲張らないことが大切です。
- 新しいきっかけを具体的に決める。 「新しい駅で降りたら一駅分歩く」「新居のキッチンに立ったら水を一杯飲む」のように、場所と行動をセットにします。
- 環境を先に整える。 ジムの近くの物件を選ぶ、スマホの充電器を寝室の外に置くなど、最初の配置で勝負が決まります。具体的なやり方は環境デザインで習慣を作る方法を参考にしてください。
- 最初の数週間は毎日記録する。 新しい生活パターンが固まる前に、行動が本当に定着しているかを確認します。
なお、年度初めや誕生日のような「区切り」の日にやる気が高まる現象はフレッシュスタート効果と呼ばれます。こちらは気持ちのリセット、今回の話は環境のリセットです。両方が重なる4月は、特に動きやすい時期といえます。
TrakBitで毎日の記録をつけるとどう役立つか?
生活が変わった直後は、何がうまくいっているのかが見えにくくなります。TrakBitでは「駅から一駅歩く」「夜は寝室にスマホを持ち込まない」といった習慣を作り、実行した日にチェックするだけです。数週間分の記録がたまると、どの曜日に崩れやすいかがひと目でわかります。新生活が始まったら、TrakBitの習慣トラッカーで最初の習慣を作ってみてください。
連続記録(ストリーク)について一つ注意があります。TrakBitのストリークは、その習慣に設定した休息日だけは途切れずに保たれますが、休息日以外の日にできなかった場合はリセットされます。育児中で土日は予定が読めない、といった事情があるなら、最初から休息日として設定しておくと現実的です。
まとめ
習慣を変える方法として一番確実なのは、意志を鍛えることではなく、きっかけが変わる瞬間を利用することです。引っ越し、転職、出産といった大きな変化は大変ですが、同時に古い習慣から抜け出すチャンスでもあります。新しい生活が固まる前に、続けたいことを一つ決めて、毎日記録してみましょう。
参考文献
- Verplanken, B., & Roy, D. (2016). Empowering interventions to promote sustainable lifestyles: Testing the habit discontinuity hypothesis in a field experiment. Journal of Environmental Psychology, 45, 127–134. https://doi.org/10.1016/j.jenvp.2015.11.008
- Wood, W., & Neal, D. T. (2007). A new look at habits and the habit-goal interface. Psychological Review, 114(4), 843–863. https://doi.org/10.1037/0033-295X.114.4.843
よくある質問
習慣を変えるのに一番いいタイミングはいつですか? 引っ越し、転職、異動、出産など、毎日の環境が大きく変わった直後です。古い習慣を引き起こしていたきっかけが消えるため、新しい行動を入れやすくなります。
生活が変わっていない時は習慣を変えられませんか? 変えられます。ただし、きっかけを自分で変える工夫が必要です。置き場所を変える、帰り道を変えるなど、小さな環境の変化でも効果が期待できます。
引っ越してからどのくらいの期間がチャンスですか? 研究では、引っ越して間もない人ほど働きかけへの反応が大きいことが示されています。新しい生活パターンが固まる前の最初の数週間から数か月を意識して使うのがおすすめです。
新しい習慣はいくつ同時に始めるべきですか? まずは一つか二つに絞りましょう。生活の変化そのものに多くのエネルギーを使う時期なので、欲張ると全部が続かなくなりがちです。