30秒でわかる要点
- 週の始まり、月初め、誕生日、祝日明けのような「時間の区切り」のあとは、目標に向けた行動が増えやすい(Dai et al., Management Science, 2014)。
- 同じ研究では、ダイエットに関する検索、大学ジムの利用、目標達成のための約束サービスへの登録が、こうした区切りのあとに増えていた(Dai et al., 2014)。
- 区切りで生まれたやる気を「もし〜なら、〜する」という具体的な計画に変えると、目標達成を後押しできる。94件の検証をまとめたメタ分析では中〜大程度の効果(d = 0.65)が報告されている(Gollwitzer & Sheeran, 2006)。
- 1月を待つ必要はない。次の月曜日、11月1日、自分の誕生日が「新しいスタート」になる。
「年が明けたら運動を始めよう」「4月から本気を出す」。そう決めたまま、気づけば10月も終わりかけている。そんな経験は多くの人にあるはずです。実は、この「区切りを待つ」心理そのものは悪いものではありません。使い方さえわかれば、1月を待たなくても、今週から動き出すきっかけになります。
フレッシュスタート効果とは何か?
フレッシュスタート効果(fresh start effect)は、ペンシルベニア大学ウォートン校のヘンチェン・ダイ、キャサリン・ミルクマン、ジェイソン・リースが2014年に発表した研究で名づけられた現象です。
研究チームは3種類のデータを調べました。Googleでの「ダイエット」の検索量、大学のフィットネスジムの利用記録、そして目標達成のための約束(コミットメント契約)を結ぶウェブサービスへの登録です。その結果、どのデータでも、週の始まり、月の始まり、年の始まり、祝日のあと、誕生日のあとといった「時間的なランドマーク」のあとで、目標に向けた行動が増えていました。
著者たちは、区切りによって「過去の自分」と「これからの自分」が心理的に切り離されると考えています。「先月の自分は続かなかったけれど、今月の自分は違う」と思いやすくなり、失敗の記憶に引きずられにくくなるのです。
ここで大事なのは、効果があったのは元日だけではなかった点です。毎週の月曜日も、毎月の1日も、同じように働いていました。
なぜ年明けまで待つ必要はないのか?
日本には区切りがたくさんあります。月曜日、月初め、給料日、誕生日、新年度、さらには引っ越しや異動も、自分にとっての「リセットの日」になりえます。
10月末の今なら、すぐ先に11月1日があります。年末まで待てば、それだけで2か月ほど練習の機会を逃すことになります。しかも年明けは、帰省や新年会、仕事始めの忙しさが重なる時期です。新しい習慣を始めるには、むしろ条件が悪いことも少なくありません。
もう一つの理由は、習慣が身につくまでに時間がかかることです。習慣化にかかる期間は人と行動によって大きく違います。早く始めるほど、1月を迎えるころには「いつもの行動」に近づいているはずです。
区切りをうまく使うには、続けた日を目で見て確認できる仕組みもあると便利です。紙の手帳でもかまいませんし、習慣トラッカーアプリを使えば、毎日の記録がそのまま次の区切りでの振り返りになります。
区切りのやる気を、目標達成の行動に変えるには?
フレッシュスタート効果は、あくまで「始めたい気持ち」を高めるものです。その気持ちを数週間後も続く行動にするには、もう一歩必要です。
1. 目標を「行動」に置き換える
「健康になる」「英語を話せるようになる」は結果であって、毎日できることではありません。「朝食のあとに10分歩く」「通勤電車で英単語アプリを5分開く」のように、今日できる行動に落とし込みます。結果より行動に目を向ける考え方は、目標より習慣を設計するという発想とも重なります。
2. 「もし〜なら、〜する」と決めておく
ニューヨーク大学のゴルヴィツァーとシェフィールド大学のシーランは、こうした計画(実行意図、if-thenプラン)に関する94件の検証をまとめ、目標達成に中〜大程度の効果があると報告しました。
たとえば次のように書きます。
- もし月曜の朝に駅に着いたら、エスカレーターではなく階段を使う。
- もし夜9時になったら、スマホを充電器に置いて本を開く。
- もし残業で疲れて帰ってきたら、ストレッチだけは3分やる。
区切りの日に「何を始めるか」と一緒に「いつ・どこで・どうなったら」を決めておくと、やる気が落ちた日にも迷わずにすみます。
3. 小さく始めて、区切りごとに見直す
最初の週は、物足りないくらいの量でかまいません。毎週月曜日を「見直しの日」にして、続けやすかったか、量を増やせそうかを確認します。区切りを「始める日」だけでなく「調整する日」として使うのがコツです。
4. やめにくい仕組みを足す
友人に宣言する、ジムの月額を先に払う、といったコミットメント・デバイスを組み合わせると、区切りのやる気が薄れたあとも行動が続きやすくなります。
途中で崩れたら、次の区切りを待つべき?
待つ必要はありません。研究が示しているのは、区切りが「やり直しやすさ」をつくるということです。区切りは自分でつくることもできます。「明日の朝から」「次の月曜から」と、すぐ先の日を新しいスタートに決めましょう。
ただし、ただリセットするだけでは同じところでつまずきがちです。崩れた日を振り返り、「金曜の飲み会のあと」「出張の週」といったパターンが見えたら、そこにif-thenプランを追加します。
TrakBitで毎日の記録をつけると何が変わる?
区切りの効果を活かすうえで、記録はとても役に立ちます。TrakBitでは、たとえば「朝食後に10分歩く」という習慣をつくり、できた日にチェックを入れるだけです。月初めや月曜日に記録を見返せば、どの曜日に続いたか、どこで途切れたかが一目でわかります。
まずは次の区切りに向けて、1つだけ習慣を登録してみてください。TrakBitの習慣トラッカーなら、今日からでも始められます。
連続記録(ストリーク)について一つ補足があります。TrakBitのストリークは、その習慣に設定した休息日にだけ維持されます。休息日ではない日に記録できなければ、ストリークは途切れます。週末は休むと決めているなら、最初から土日を休息日に設定しておきましょう。途切れた場合も、翌日がまた一つの区切りです。
まとめ
フレッシュスタート効果は、元日だけの特別な力ではありません。月曜日も、月初めも、誕生日も、新しいスタートとして使えます。目標を達成するには、区切りで生まれたやる気を小さな行動とif-thenプランに変え、毎日の記録で見直していくこと。次の区切りは、もうすぐそこです。
参考文献
- Dai, H., Milkman, K. L., & Riis, J. (2014). The fresh start effect: Temporal landmarks motivate aspirational behavior. Management Science, 60(10), 2563–2582. https://doi.org/10.1287/mnsc.2014.1901
- Gollwitzer, P. M., & Sheeran, P. (2006). Implementation intentions and goal achievement: A meta-analysis of effects and processes. Advances in Experimental Social Psychology, 38, 69–119. https://doi.org/10.1016/S0065-2601(06)38002-1
よくある質問
フレッシュスタート効果とは何ですか? 週の始まり、月初め、誕生日、新年度のような「時間の区切り」のあとに、目標に向けた行動が増えやすくなる傾向のことです。ペンシルベニア大学ウォートン校のDaiらが2014年に報告しました。
1月まで待ったほうが効果は大きいですか? 研究では年明けだけでなく、週や月の始まり、誕生日の後にも同じ傾向が見られました。待つ必要はなく、次の月曜日や月初めで十分です。
やる気が続かないときはどうすればいいですか? 区切りで生まれたやる気を「いつ・どこで・何をするか」という具体的な計画に変えておくことです。if-thenプランは目標達成を後押しすることがメタ分析で示されています。
途中でやめてしまったら、次の区切りまで待つべきですか? 待たなくて大丈夫です。翌日の朝や次の週の始まりなど、小さな区切りはすぐに来ます。記録を見返して、どこでつまずいたかを確認してから再開しましょう。