30秒でわかるまとめ
- ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の研究者は、医師が患者に伝える健康アドバイスを「習慣づくり」に置き換えることを提案しました(Gardner, Lally & Wardle, 2012)。
- 方法はシンプルで、簡単な行動を一つ選び、毎日同じ場面で繰り返すだけです(Gardner et al., 2012)。
- 理由は、やる気はすぐに薄れても、習慣になった行動はやる気が低い日でも続くからです(Gardner et al., 2012)。
- 日常生活での調査では、新しい行動が自動化するまでの期間は人と行動によって大きく異なりました(Lally et al., 2010)。
会社の健康診断の結果が届いて、「血圧やや高め」「腹囲が基準超え」。保健指導では運動、減塩、睡眠、お酒……とアドバイスがずらりと並びます。その場では「よし、やろう」と思っても、二週間後にはいつもの生活に戻っている。そんな経験はありませんか?
なぜ医師に向けて「小さな習慣」がすすめられたのか?
2012年、UCLのベンジャミン・ガードナー、フィリッパ・ラリー、ジェーン・ウォードルは、かかりつけ医向けの医学誌 British Journal of General Practice に論文を発表しました。彼らの問題意識は、健康アドバイスの多くが「やる気を高めること」に頼っている点です。やる気は長続きしません。一方で習慣は、いつもの場面が来れば自動的に動き出します。
そこで論文では、アドバイスを次のような具体的な計画に変えることを提案しています。
- 取り組みたい健康の目標を決める。
- その目標に近づく簡単な行動を一つ選ぶ。
- いつ、どこでやるかを、すでに毎日していることと結びつけて決める。
- その場面が来るたびに実行する。
論文に添えられた患者向けリーフレットでは、最初は意識が必要でも、同じ場面で繰り返すうちに楽になり、やがて考えなくてもできるようになると説明されています。毎日の実行を記録する道具を探している人は、習慣トラッカーアプリの比較記事も参考にしてみてください。
健康習慣が身につくまでには、どのくらいかかる?
同じUCLのラリーらは、ボランティアに新しい健康行動を一つ選んでもらい、毎日実行したかどうかと、どれくらい自動的にできたと感じたかを記録してもらいました。自動化の度合いは最初に大きく上がり、その後はゆるやかになって頭打ちになりました。
ここで大事なのは、かかる期間に大きな個人差があったことです。水を飲むような簡単な行動は早く身につき、運動のように負担の大きい行動は時間がかかる傾向が見られました。具体的な日数や研究の詳細は習慣化にかかる期間の記事で解説しています。三週間たってもまだ意識が必要でも、失敗ではありません。
毎日の生活に取り入れやすい健康習慣の例
コツは、すでに毎日起きている場面に行動をくっつけることです。日本の一般的な一日を想定した例を挙げます。
- 朝、歯をみがいた後: コップ一杯の水を飲む。
- 昼食のとき: 定食やお弁当の野菜から先に食べる。
- 駅や職場で: エスカレーターではなく階段を一つ分だけ使う。
- 帰りの電車を降りたら: 一駅分、または家まで少し遠回りして歩く。歩くことの効果はウォーキングと内臓脂肪の関係でも紹介しています。
- お風呂から上がったら: スマホを寝室の外で充電する。ほかの睡眠衛生の習慣と組み合わせるのもおすすめです。
それでも大変に感じるなら、さらに小さくしてかまいません。スクワット2回、ストレッチ1分でも十分なスタートです。
忘年会や帰省でリズムが崩れたらどうする?
年末の忘年会シーズン、お正月の帰省、連休の旅行。健康習慣が途切れやすいのは、いつもの場面がなくなる時です。
最小バージョンを決めておく。 「15分歩く」が習慣なら、忙しい日は「5分だけ」にしてもかまいません。いつもの場面で行動を起こすこと自体を守るのが目的です。
一回の中断を長引かせない。 ラリーらの調査では、たまに一回抜けても習慣化の流れに大きな影響はありませんでした。問題になるのは、抜けた日がそのまま何日も続くことです。「月曜から再開」ではなく、次の機会にすぐ戻りましょう。
TrakBitで毎日の記録をつけるとどう役立つか?
UCLの調査の参加者は、毎日実行したかどうかを記録していました。記録すると、ぼんやりした「健康に気をつける」が、目に見える行動に変わります。TrakBitでは「歯みがきの後に水を一杯」のように場面ごと習慣を作り、実行する曜日を選んで、できた日にチェックします。二、三週間続けると、崩れやすい曜日や時間帯が見えてきます。まずは一つだけ、TrakBitの習慣トラッカーで作ってみてください。
連続記録(ストリーク)について:TrakBitでは、その習慣に設定した休息日はできなくてもストリークが途切れません。ただし、休息日以外の日にできなかった場合はストリークが途切れます。週末は生活リズムがまったく違う、という人は、最初から無理のない休息日を設定しておきましょう。
まとめ
健康習慣が続くかどうかは、その日のやる気ではなく、仕組みで決まります。行動を一つに絞り、毎日の決まった場面に結びつけ、記録する。健康診断のアドバイスを全部いっぺんに守ろうとするより、そのほうがずっと確実に体は変わっていきます。
参考文献
- Gardner, B., Lally, P., & Wardle, J. (2012). Making health habitual: The psychology of 'habit-formation' and general practice. British Journal of General Practice, 62(605), 664–666. https://doi.org/10.3399/bjgp12X659466
- Lally, P., van Jaarsveld, C. H. M., Potts, H. W. W., & Wardle, J. (2010). How are habits formed: Modelling habit formation in the real world. European Journal of Social Psychology, 40(6), 998–1009. https://doi.org/10.1002/ejsp.674
よくある質問
健康習慣はいくつ同時に始めればいいですか? 一つで十分です。UCLの研究者は、簡単な行動を一つ選び、毎日同じ場面で繰り返すことをすすめています。自然にできるようになってから次を足しましょう。
健康習慣が身につくまでどのくらいかかりますか? 人や行動によって大きく違います。同じ研究グループの調査では、数週間で身についた人もいれば、半年以上かかると推定された人もいました。簡単な行動ほど早く自動化する傾向があります。
一日できなかったら最初からやり直しですか? 同じ調査では、たまに一回抜けた程度では習慣化の流れに大きな影響はありませんでした。大切なのは、次のタイミングで元に戻すことです。なお、TrakBitのストリークは、設定した休息日以外の日にできなかった場合は途切れます。
どんな健康習慣から始めるのがおすすめですか? すでに毎日している行動にくっつけられる、2〜3分でできることです。朝の歯みがきの後に水を一杯、昼食で野菜を先に食べる、駅では階段を使う、などが始めやすい例です。